歩きながら違和感に気づいた



いつも賑わっている繁華街が、今日はなんだか空気が張り詰めているように見える


それがなんだかは分からないけど


変な胸騒ぎを覚えながら大通りを渡った


歩道を歩きながら対岸に気を取られていると、正面からバタバタと走ってくる人達が見えた


スーツ姿の男性二人が周囲を見回しながら通り過ぎる


咄嗟にガードレール寄りに避けたけれど、しばらく歩くと同じようなシーンに何度も出会した


・・・ん?


スーツ姿で走る男性がなにかを探している?


加えて“強面”の風貌・・・


となると・・・



想像だけで思い付いたのは


犯人を追いかける刑事さんだった


・・・んと


実は街は危険な所かもしれない


勝手な妄想でサスペンスドラマの凶悪犯との大捕物を思い浮かべて


呑気に歩いていた私の前に


息を切らして走るヒロが現れた


「・・・っ、ヒロっ」


驚いて顔を見上げる私と


「・・・っ、オネエサン」


同じように目を丸くしたヒロ


バタバタと聞こえてくる足音に気づいた途端


「逃げるわよっ」


ヒロの腕を引いて走り出していた





出来るだけ足音を消して走ること数十メートル


アパートに着いた時には緊張の糸が切れたみたいに座り込んだ


「オネエサン、足早っ」


「・・・ハァ、ヒロ、は、大丈夫?」


「大丈夫だよ」


焦った私と対照的にヒロは呼吸さえ乱れていない

日頃の運動不足を反省する間もなく、今度はヒロに手を引かれて立ち上がった