半径3cm未満に(2)




雨がアスファルトを叩きつける音が家に響きわたる。

「恋衣、一緒に行こう」

そう言う男の人にぐっと腕を強く捕まれ、抵抗もせずについて行こうとする。

「やめて!恋衣に近づかないで!」

その声が私を振り向かせ、男の人も立ち止まった。

「いいだろ、もう」

「…やめてって、言ってるよね?」

怒りで震える声に私もびくついて肩が上がる。

「恋衣はどうしたい?
お父さんとお母さん、どっちと一緒にいたい?」

そう言った男の人は私の肩に手を置き目線を合わせる。

「どっちって…お父さんはもういな…」

そこで気づいた。


今私の目の前にいる人は、


怒鳴られている人は、


私の肩に手を置いている人は、



















4年前に失踪した、父であると。