雨がアスファルトを叩きつける音が家に響きわたる。
「恋衣、一緒に行こう」
そう言う男の人にぐっと腕を強く捕まれ、抵抗もせずについて行こうとする。
「やめて!恋衣に近づかないで!」
その声が私を振り向かせ、男の人も立ち止まった。
「いいだろ、もう」
「…やめてって、言ってるよね?」
怒りで震える声に私もびくついて肩が上がる。
「恋衣はどうしたい?
お父さんとお母さん、どっちと一緒にいたい?」
そう言った男の人は私の肩に手を置き目線を合わせる。
「どっちって…お父さんはもういな…」
そこで気づいた。
今私の目の前にいる人は、
怒鳴られている人は、
私の肩に手を置いている人は、
4年前に失踪した、父であると。

