お昼休憩まであと10分
何を食べるかで頭をいっぱいにしたいとこだけど、今はそれよりも…

「私の顔に穴を開けようとでも?」

『んーん、ただ先輩のこと見てるだけです』

「正直なのは認める。でも見ないでもらえたらとっても助かるんだけど」

『なんでですか?仕事はちゃんとしました』

「私が集中できないの」

『ひひっ、かわいい』

「あー、もう。ほんと物好きな子だよぉ。何が望みなの?」

『先輩とランチに行きたいです』

「今日仕事多いしデスクでぱぱっと食べるつもりなんだけど」

『手伝いますから、ね?』

「…お店の候補は?」

『ハンバーグのお店見つけたんですよね、それも鉄板で焼くとか』

「行く」

『ふはっ、食べ物の時は素直ですね』

「あと10分でこれ終わらせなきゃ、待ってて私のハンバーグ」


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私のバッグを人質ならぬ物質?にして上機嫌で歩くのは2つ下の後輩

会社でもため息が出るほど整った顔立ちとスマートな仕事ぶりで人気、らしい

私にとっては憎たらしいほどかわいくて面倒くさい後輩でしかないんですけども。

教育係として教えたから、雛が生まれてから見た存在を親として認識して後をついてくる、みたいなすりこみがあって、この小生意気な後輩に懐いてもらっている

「相原くん、そろそろバッグを返してもらいたいんですけど」

『嫌です。返したら先輩逃げるかもしれないので』

「逃げないよ、少なくとも今日はハンバーグ食べなきゃいけないのでね」

『この前の逃走歴があるので信じられません』

「あれは主任から呼び出しがあったからです〜」

『どうだか、他の人からの呼び出しは平気で無視するのに、あの時は…』

「人聞き悪いでしょ!でもまぁイケメンには抗えませんから、へへ」

『先輩きらーい』

「売り言葉に買い言葉!じゃあ私も、」

『だめです、先輩は僕のこと嫌いになる権利ありません』

「ふふ、分かったよ〜」