部屋の窓を開けるとひんやりとした風が一気に入り込んで暖房で火照っていた顔を心地いいほどに冷やす。



靴を履いて首にかけたカメラが落ちないようにそっと抜け出し、窓を閉め静かに駆けだした。



両親にバレないかと少しヒヤヒヤしながら。



深夜1時 街灯もあまりない田舎。町は暗く静かだ。



静かな方が落ち着くけど。



期末テストが終わってようやく勉強と学校から解放された。


学校は息苦しい。騒がしくて影では悪口が飛び交っている。



そこにいるだけで気分が悪くなる。



息抜きに今日は絶対夜の星を写真に収めると決めている。



だが、過保護なうちの親はそんなこと言ったところで許してもらえないだろうからこうしてこっそり抜け出してきた。



家から歩いて15分ほどにある海岸へと足早に向かう。



海は光を持たないから星を輝きを掻き消さない。きっと星がすごく綺麗に写真に映るだろう。



段々と潮の匂いが強くなり、冷たい風が肌をヒリヒリと痛める。



海岸に近づいてきたその時、目に映ったのは星を見つめる1人の女の子だった。



長く細い足
華奢な身体
黒く長い髪がふわふわと波風に揺られている。



「綺麗だ……」



思わず僕は小さく口にした。
気がつけば首にかけていたカメラを手に取り、カシャリとその風景を写真に収めていた。



静寂に包まれた海岸に優しい波の音と共にシャッター音が響き渡った。



その音に気づいたのか彼女は振り返りこちらを振り向いた。



目が合った瞬間、時が止まったような感覚になったと同時に焦りが湧いてきた。



どうしよう、撮ってしまったのがバレたのだろうか……



彼女は僕の元へと駆け寄ってきた。



「ねぇ!あなたも星が好きなの?」



思わぬ発言に言葉を返せなかった。


何よりすごく綺麗な顔立ちに目を奪われた。



「あ!それとも海?」



「え、あー、そういうのじゃなくて……」



戸惑いを隠せないまま、曖昧な返答をしてしまう。



彼女は少し残念そうに笑った。



「そっかー、

この時間のこの場所に来る人なんて初めて見たから星が好きなんだと思ってつい話しかけちゃった。

ごめんね」



白くきめ細かい肌
ぱっちりと大きな目に澄んだ瞳
鼻筋が通った小さい鼻

冷えて頬と鼻が赤く染っていて白いふわふわのマフラーに包まれているのが可愛らしかった。


つい見惚れていると「どうしたの?」と声をかけられる。



「あ、ごめん、なんでもない。」



じっと見つめてしまっていたのが恥ずかしく慌てて答えた。



彼女は僕が手に持っているカメラを指さした。



「それにそれ

さっき写真撮ってたでしょ?

あ!もしかして写真撮るのが好きなの?」



ぱーっと笑顔になり僕に問いかける。



目をきらきらと輝かせながら眩しい笑顔をする彼女に僕は思わずカメラへと目を背ける。



「…うん。自分が綺麗だと思うものを一枚の写真に切り取るのが好きなんだ。」



「見たい!さっき撮った写真見せてよ!」



「いいよ。」



明るく真っ直ぐな彼女なら写真に映り込んでしまっていても許してくれるだろうと思った。



「ごめん。ちょっと写っちゃってるんだけど、」



カメラフォルダを開き、軽く謝って写真を見せる。




「」