[節約は誘惑のはじまり]


「すみません、こんなものしかなくて」


申し訳なさそうな顔をする紫音に明るく返事をした。


「ううん、美味しいよ。カップ麺って初めて食べたけどほんとに便利だよね」


テーブルの上にはインスタントの味噌ラーメンとコンビニの小さいサラダ、デザートにプリン。


お湯をかけて3分で出来上がってしまうお料理って凄い。味もなかなか美味しいし。


珍しいものばかりだし、今の私にとってはご馳走だよ。


「明日からはもっとまともな食事を準備します」


「ううん、いいの。
非常食ってまだまだたくさんあるんでしょ?
食べないと勿体無いよ」


冷蔵庫にあった食材が10日ほどで底をついてしまい、今は災害時にと備蓄されていた非常食でしのいでいた。


「それより、紫音はもっと食べて」


彼は最近あんまり食事をとっていない気がする。


身体だって私よりもずっと大きいのに、カップ麺ひとつで足りるわけないよ。