溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く

一瞬の隙をついて逃げだし執事科の校舎へ向かって無我夢中で走り出した。


紫音、紫音、助けて。


心の中で執事の名を呼んだ。


「おいっ、待て」


「おいかけろ」


だけど、私の足ではすぐに追いつかれて、長い髪の毛をガシッと乱暴に掴まれた。


「キャッ……」


激痛に顔を歪め小さく漏れる悲鳴。


目が霞んで、意識が遠のきかけたけどその声を聞いてハッと我に帰る。


「お嬢様ー」


紫音が勢いよく走ってきてくれるのが見えて、涙がでそうなほど嬉しい。


「ゲッ、おまっ」


「汚い手でお嬢様に触れるなっ」


私の髪を掴んでいる御曹司の腕を紫音が手刀ではらう。


ようやく髪が自由になり楽になったけど、力が抜けてその場にへたり込んでしまう。


後方ではドカッ、バキッと激しい音が響き渡ったけど怖くて振り返れない。


「ゴフッ」


「や、やめろっ」