「違います、執事はやめてなんかいませんっ」


精一杯、勇気を振り絞ったつもりだったけど、小さい震え声しか出せない。


「やめてなんかいませんっ、だってー、かっわいー。
でも今1人きりじゃん」


「強がんなよ、君の執事ってあのイケメンのシオンて奴だろ?
あいつ、他のお嬢様に引き抜かれてたぜ」


「……」


「俺の婚約者もあいつに夢中なんだよな。執事の分際でムカつく」


忌々しそうにそう言った彼を見たら、あまりパッとしない容姿。


紫音の悪口を言うなんて逆恨みだ。


「なあ、お兄さん達と遊びにいかない?優しくするからさ、それにお小遣いもあげるよ」


「お金に困ってるんでしょ?
俺らが助けてあげてもいいよ」


「おー、そうだ。俺の父にお願いして君の親の会社の援助をしてあげる」


そう言って、そのうちのリーダー格っぽい1人が私の腕を掴んで引き寄せようとする。