「もう謝らなくていい。
他の男に愛を告白する女の子に未練なんてないから」


「……」


「君はこっちから願い下げだ。
父には僕の方から伝えておくよ。
僕から断ったから、婚約破棄の不利益は一切負わなくていい」


話し方は冷たいけれど、私の立場を思いやってくれているのが痛いほど伝わる。


「天堂さん……ありがとうございます」


彼は私と目が合うと、すぐに逸らしてポツリと呟く。


「……さよなら」


彼の後ろ姿が涙で滲んでよく見えなかったけれど、私はそっと感謝と謝罪の気持ちを繰り返しその背中に送っていた。