実はさっきから彼としっかりと手を繋いでいる。


みんなに見られてちょっと恥ずかしいけど、まだ不安で彼から片時も離れたくないの。


この手を離したらまたどこかに消えてしまうんじゃないかって疑ってる。


「お嬢様、もう俺はどこにも行きません、だから手を……」


紫音は照れくさそうにそう言って手を引っ込めてしまうから今度は腕をからめた。


このまま、たとえ引きずられても逃がさないんだから。


「お嬢様黙っていなくなってすみません。
はじめは本当にお嬢様の前から消えようとしたけど俺はどうしても出来なかったんです」


「うん、ずっと見守ってくれてたんだよね?」


「見守るっていうのは口実で、結局俺はお嬢様から離れたくなかったんだって気がつきました」


「紫音」


「こんな中途半端な自分が情けないです」


額に手を当て背中を小さく丸めてしまう。