『お嬢様のお肌はツヤツヤでとてもお綺麗ですね』


みんなとっても優しかったな。


私の周りには常にお世話してくれるメイドさんやスタッフさんが何人もいて大切に扱われてきた。


だけど、もうあんな幸せな日常は二度と戻ってはこない気がする。


小さくため息をこぼしたけれど、ふと最後に1人まだ邸のどこかに彼がいることを思い出す。


「紫音(しおん)、どこ?」


すがるような気持ちで執事の名を呼んだ。


だけど、すぐに返事がなくて不安。


うそ、執事の紫音はまだお別れの挨拶にはきていなかったはず。


さよならも言わずにいなくなるなんて嫌。


「紫音、紫音、いないの?」


今にも泣きだしそうになりながら大きな声をあげた。


「やだ、やだよ……」


そう言えば、今日学校から帰って彼の姿を見ていない。


まさか、もうとっくに出て行ってしまったんだろうか。