[プロポーズ]


階段を、降りてきた私は一階の玄関扉へと向かう廊下で立ち止まった。


「え、どうして」


紫音と話しているその人と目があった瞬間、身体が凍りついた。


「こんにちは、如月さん。もう昼過ぎだけどまだ寝ていたんだね」


瞳を細めて優しく笑う天堂さんは目の覚めるような真っ白なタキシード姿。


そして真紅の薔薇の花束を胸に抱いていて。


まさに王子様そのもの。


これって3回目の薔薇の花束。


晶ちゃんが話していたプロポーズの儀式に違いない。


「え、えと」


まさか、こんなに早くこの日が来るなんて。


それにてっきり学校にいる時に行われるのかと思い込んでいた。


こんな不意打ちみたいに、家に来られるとは思わなかったから動揺して後ずさってしまった。


ど、どうしょう、紫音が見ている前でプロポーズされるなんて、それだけでも気まずいのに……。