気のせいかもしれないけど、彼の耳がうっすらピンク色に見えた。


そのことが可愛いって思って胸がキュンと鳴る。


「ちょっと出てきます」


「う、うん。お願い」


そう言って私の部屋から出ていく彼の後ろ姿をぼんやり見つめていた。


彼が私の部屋から出ていくと肩の力がすっーと抜ける。


最後まで言えなくてがっかりした気持ちと共に、言わなくて良かったっていうホッとした気持ち。


どうしても好きだと伝えたかったけど、冷静になって考えてみたら一方的な気持ちを押し付けて彼を困らせてしまうところだったのかなって。


彼のほうも私を好きで両想いなんて、ありえないもん。


もしかしてこれでよかったのかな。


私に優しくしてくれるのも守ってくれるのも尽くしてくれるのも、それは彼が私の専属執事だから。


お嬢様と執事……私たちはそういう関係。


結局私の暴走は寸前のところで訪問者によって遮られてしまった。


こんな時に一体誰が来たんだろう。


なんだか気になったから、パジャマのまま一階へ降りて行った。