「いいの、いいの。紫音だっていつもお湯を使って洗ってないでしょ」


ささやかだけどこれも節約のため。


「それでもお嬢様は湯を使ってください」


そう言ってまたレバーを切り替えようとしてきたから阻止するために手を伸ばす。


「……っ」


手と手が触れ合うと、彼の方から気まずそうにひっこめた。


「疲れたらいつでも交代しますから」


「ううん、このくらい平気だよ。最後までやらせて」


彼の方を向いてぎこちなく笑うと、またお皿へと視線を戻す。


実をいうとお水の冷たさなんて今はあまり気にならなかった。


さっきから頭の中は昼間のことでいっぱいで、考えがまとまらなくて困ってて。


彼にどうやって聞こう、何から聞いたらいいんだろう。


問いたださないといけないことが、いろいろあったはずなのに、いざ彼と向き合うとすぐに実行に移せなかった。


聞きにくいことだらけ、だったから。