溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く

うわぁ、どうしよ。絶対に引かれてる。


気持ち悪い、って思われたかも。


それとも、セクハラじゃんって思ってる?


ああ、取り返しのつかないことしちゃったよー。


どうか私のことを嫌いにならないで。


「ご、ごめ」


とにかく謝ろうとしたその時……。


彼は私の真正面で体育館の冷たい床に静かに跪き、しばっていないほうの左手で私の右手を握りしめる。


右手に触れる柔らかな唇の感触に、心臓がドキッと跳ねた。


その美しい一連の所作に見惚れているうちにその瞬間は終わり彼はスッと立ち上がる。


い、今のは夢?まぼろし?


でも右手に残る熱がこれは夢じゃ無いって教えてくれる。


気がつけば身体の血がブワッと逆流したかと思うくらい騒がしい。


「さ、行きましょう」


「う、うん」


彼は何事も無かったように穏やかに笑う。


ギクシャクと機械仕立ての人形みたいに彼の隣を歩く。