「……」


思わず頭が真っ白になる。


どうして、彼はそんなひどいことを言うんだろう。


「あ、あの、私はこれで失礼します」


小さく拳を握り締めて静かに立ち上がった。


湧き上がる感情を必死でこらえながら。


一刻も早くこの場から立ち去りたい。


紫音に対する悪意ある言葉をこれ以上聞きたくなかったから。


せっかくいい人だと思って天堂さんに心を開きかけていたのにな。


「ちょっと待って。僕の話をちゃんと聞いてほしい」


「……」


「彼といても無意味だ。
君をけっして……幸せにできないし、彼も不幸になる。どちらにとってもいいことなんて何もない」


人の心を土足で踏み荒らすようなその言葉は聞くに堪えなかった。


「やめて……ください」


誰にも私と紫音のことをわかったように言われたくない。


でもなぜか、彼の言葉はサクっと胸に刺さった。


そして、さらに彼の口をついて出たのは残酷な毒。


「執事との未来なんてないよ、本当はわかってるよね?」