紫音て、ほんとあったかいな。


けれど彼はなぜかハーって大きくため息を吐いた。


「これからはこの邸で2人きりですね」


「うん」


「意味、わかってます?」


「うん」


「いや、絶対わかってないよな」


最後は独り言のようにボソボソ言ったから聞き取れなかった。
 

「ちょっと、やっぱり近すぎますね」


彼は離れようと身じろぎするから慌ててまたひっついた。


「紫音、動かないで。ずっとこうしてて」


このまま朝まで彼にしがみついていたい。


どこにもいかないように。


「……はい」


上目遣いにお願いしたら、微妙に目線をそらされてしまう。


昔から辛くて寂しいとき
紫音に縋りつくように抱きついていたっけ。


そうすると、不思議と気持ちが落ちついた。


1番身近にいて、兄妹みたいに育ってきたからかな。


今はこのぬくもりを手放さなくていいことが嬉しかった。