「紫音、汗ふいてあげるね」


背伸びをして、彼の顔にハンカチをあてようとした。


顔と顔が近づくと、ふと昨夜のことがモワッと頭に浮かんで彼の口元に目が釘付けになっちゃう。


「……」


心臓が一瞬ドキッと跳ね上がったような気がした。


「いえ、結構です。自分でやりますから」


困ったように眉を下げる彼から視線を逸らした。


「う、うん、そうだよね」


そう言えば、あの時紫音にキスをされたんだ私。


まぶたと、おでこ、ほっぺたにも。


全然怖く無かったし嫌じゃなかった。


ただ、紫音を怒らせてしまったような気がして不安になってしまっただけ。


ふわーっ、やっぱり思い出すだけで恥ずかしくてまともに彼の顔が見れないよ。


でも、私ばっかり意識してドキドキしてるってバレたくない。


もしバレたら、紫音だって気まずい思いをしちゃう筈。


だから、昨夜の出来事は一切気にしてませんって顔をして彼と接っするようにしょう。


私はこっそり自分に言い聞かせていた。