結婚相手の第一印象サイアク。
　あの日、親たちのいる部屋に戻ったら碧は別人みたいに静かになった。
　幸い首の横につけられたキスマークは長い髪でなんとか隠した。
　そのあとはメイク下地を塗ってごまかしている。

　その日、いつものように学校の授業を終えて帰ろうとしたら、クラスの女子がざわついていた。

「ねえ、校門前にすっごいイケメンがいるんだけど！」
「え？　見たーい」

　女子たちがバタバタと教室を出ていったけど、私は興味がないので友だちとおしゃべりしながらゆっくり帰ろうとしていた。
　校門前はちょっとした騒ぎになっていた。

「誰を待っているんですかあ？」
「お兄さん、彼女いますかあ？」
「もしかしてモデルさんですかあ？」

　女子たちに囲まれた人物を見て私は足を止めた。
　スーツ姿の碧が立っていたのだ。
　そしてすぐに回れ右して校舎へと戻る。
　友だちに「どうしたの？」と声をかけられたけど、私は碧にばれないように顔を背けたまま答えた。

「ごめん、ちょっと忘れ物したの。先に帰ってて」

　そう言い残して教室へ戻った。