碧は私のいろんなところにキスをした。
 だけどそれ以上のことはしなかった。

 私は碧の腕に抱かれた状態で横たわっている。
 こんなふうにして誰かと眠るのは初めてで緊張する。
 ふと、私は下のほうに何か当たっているのを感じて、それが何かわかったら余計にドキドキした。

「あ、碧……?」
「言うな。これでも限界まで我慢してる」
「ごめん」

 碧はくしゃくしゃと私の髪を撫でた。

「おまえのこと、大事にしたい。だから、ゆっくりでいい」

 その言葉に胸がぎゅっと苦しくなり、同時に切なくなった。

 どうして碧相手にこんな気持ちになるんだろう?
 私たちただの政略結婚なのに。
 これも碧の作戦なのかなって思ったりしたけど、それでもいいと思ってしまった。

 このまま彼に囚われてもいいなんて。
 私はもう、彼に堕ちてしまったことを自覚せざるを得なかった。
 
 だけど、そんなことぜったい言えない。
 簡単な女だって思われたくないから。

「おまえの誕生日、8月?」
「うん」
「3か月後か」
「そうだね」
「じゃあさ……」

 碧は私の顔を見下ろしながら言った。

「おまえが18になったら、ぜんぶもらうから」

 あまりに真剣な表情で、どきりとした。
 私は答えられなかった。
 だけど、拒絶もしなかった。

 ただ、碧の胸に頭をくっつけて、それから心地よい眠りが襲ってきて。
 私はそのまま眠ってしまった。