食事のあとエレベーターに乗ったけど、途中の階で降りることになった。

「どこに行くの?」
「ああ、これからおまえとふたりきりになれるとこ」
「え?」

 何を言っているんだろう?
 だってここ客室……。

「ちょっと待って! まさか泊まるの?」
「そうだけど」
「やだ、なんで?」
「なんでって、俺酒飲んだし」

 まさか、大丈夫ってそういうことだったの?

「私、帰る」
「おまえの父親には泊まることを許可してもらったんだけど」
「だって、私まだ……」

 男女がホテルにふたりきりで泊まるなんて、そういうコトだよね?
 婚約しているわけだし、たとえ相手のことが好きじゃなくても、いつかそうなるんだってわかってるけど。

 まだ、心の準備ができていない。

「心配しなくても変なことしねぇよ」
「え?」

 不安げに見あげると、碧は私の肩を抱いて顔を覗き込んだ。

「それとも、してほしい?」
「もう、バカ!」

 にやにやする碧の腕を叩いて払いのけた。