夕食は高級ホテルのレストランで夜景が見える個室に案内された。
 豪華なシャンデリアに壁には大きな絵画、床は赤い絨毯、テーブルは広くフォークとナイフとシャンパングラスが並んでいる。
 料理も豪華だった。

 魚介をふんだんに使ったサラダにえびのテリーヌが綺麗に皿の上で飾られて、見ているだけで満たされる。

「わ、美味しい」
「だろ? お前が酒飲めればいいのにな」

 私のグラスに注がれているのはノンアルコールカクテルだ。
 碧はワインを飲んでいる。

「え? でもあなた車の運転……」
「そのことなら大丈夫だから心配するな」

 誰かに迎えに来てもらうのかな?

 そのあとも、次々と綺麗に盛り付けされた料理が来た。
 かぼちゃのポタージュスープに伊勢えびのホワイトソースがけ。
 牛肉のステーキに焼き立てのバゲット。
 ケーキとアイスクリームにフルーツ添え。

 最後に紅茶を飲みながらすっかり満たされた気持ちになった。
 おかげで昼間の苦い記憶が薄れて、ちょっとだけ碧に感謝した。