「ごめん、柚葉(ゆずは)。別れてほしい」

 校舎の裏庭に呼び出されたと思ったら、彼氏の友樹(ともき)に別れを告げられた。
 あまりに突然のことで頭が混乱する。
 
 だって、昨日までフツーの恋人同士だったのに。
 放課後にデートして、夜遅くまで電話して、お互いの誕生日をお祝いして。
 特に喧嘩もしたことないし、うまくいっていると思ったのに。

「どうして? 意味わかんないよ。私が何か悪いことした?」
「いいや、違う。柚葉は悪くないよ。俺のせいなんだ」
「どういうことなの?」
「他に好きな人ができた」

 どくんっと鼓動が鳴った。

 他に好きな人ができた……?

 その事実をすぐに受け入れることができなくて、頭の中はもやがかかったみたいに真っ白になった。

 私、振られたんだ。
 その現実をようやく認められたのは散々ひとりで泣いた夜のことだった。