名前のせいで毎年のごとく理科委員に選定される私は、いつものように理科室へプリントを届けに向かっていた。普通だったら先生は職員室にいるはずだけど、私が理科委員だって把握しているあの人がいないことは分かっている。だから、校舎の隅っこにある理科室まで行かないといけない。面倒極まりない――それに、ちょっと嬉しいと思っている自分がいるのも癪。あー、むかつく。
 外からの声に目をやると、窓ガラスに自分の姿が映った。お世辞にも可愛いとは言えない目つき、無愛想な表情、肩で無造作にはねた髪。どう見たって女子力は皆無な見た目。自分でも嫌になるけど、これが私なんだから仕方ない。もっと他の姉妹達みたいに女子力が高ければなぁ。とりあえず、前髪だけ整えてみた。だから何? って感じ。一つ息を吐いて諦め、さっさと理科室へ向かう。
 校舎は三つの建物に分かれていて、それぞれが一階、二階、三階と渡り廊下で繋がっている。理科室があるのは、一番奥の三つ目の一階の端っこ。こんな所放課後になったら私とあの人ぐらいしか来ない。

――と、思っていたのに。

「先生、好きです――」