「えーと、五組の石塚さんですね。わかりました」
受付の生徒会の女の子は愛想良く笑って、あたしは恥ずかしくて苦笑いを浮かべていた。

できればだれにも知られたくなかったが、受付でさすがに偽名はバレるし、なんなら生徒手帳も確認されるので到底うそはつけない。

「じゃあこれ、1000円です」
「はい。ありがとうございます。中、どうぞ」
受付の子はそんなあたしに気付くこともなく、体育館の入口を手のひらで示して誘導する。
同級生ではなくてよかったと心の底から安堵する。
そっと足を踏み入れると、視線がちらちら集まるのを感じた。

「みてみてあれ、やばくない?」
「まじ仮装じゃん。気合はいりすぎ」
「でもあの子かわいー。似合う」
野次馬の声も、ほめられる声も、聞こえないようにいってるのかもしれないが丸聞こえだ。

体育館の舞台には、「Happy Halloween」と書かれた横向きの看板が飾ってあった。
周りには画用紙で作成されたのであろうおばけやかぼちゃが貼られている。
壁にも同じようなおばけやかぼちゃが貼られていて、たぶん百均で買ったであろうガーランドも飾ってあった。
中自体はそこまで明るくなく、あちこちにオレンジに光るライトが置いてあった。

テーブル上にお菓子や飲み物が置いてあって、セルフでやるようだったので、適当にお菓子をつまむことにした。

予想通りだなー。

お菓子を食べながら周りを見渡すと、やっぱり仲いい同士がくっついて話してるだけだった。

あたしだけが、こんなにも気合をいれている。
そしてぼっちという。
あたしとバレたくないからいいんだけどそれで。