「なんか、仲良しだね」
高斗にぼそっととんでもないことをつぶやかれて、あたしの頭は真っ白になる。
やだ! 誤解しないで!
「全然違う!」
「あ、ゆりかひっでー」
ひどくない! なにもひどくない!
だれかこいつどうにかしてほしい……。
「あ、いた。とおるくーん」
その時、あたしでもわかる猫なで声で、向こうから華美な衣装の女子三人くらいが走ってきた。
もう10月も終わりで肌寒いのにお腹や肩が露出していた。
隣に座るあたしを一睨みして、ヤツには満面の笑み。
こいつをどっかにやってくれるチャンスだと思うと睨まれたけど彼女たちが神様に見えた。
「早く会場もどろーよ。やっぱとおるくんがいないとつまんない」
「ケーキでてたよ。一緒に食べよー」
「早くしないとなくなっちゃう」
「まじかー。じゃあもどろっかな。高斗とゆりかは?」
女子たちがまとわりついてるのをスルーして、あたしたちに話をふってくる。
ここで話ふってこないでよ!
怖いよ! めっちゃ見てるんですけど!
「あ、高斗もいるんだ。じゃあ一緒にいこーよ」
完全にあたしはアウトオブ眼中らしい。
シカトである。それでいいけど。
「俺はもうちょいここいるよ。どうせ試食したしな」
「ふぅーん。ゆりかは?」
「あたしもいい。まだ少し涼んでる!」
強くハッキリ言うと、それ以上追及することもなくヤツは腰をあげた。
女子たちは我先にと隣をキープしようとしていた。
「んじゃ、またあおーね。ゆりか」
高斗にはいわずにあたしにだけいうのがタチが悪い。
ひらひら手をふるヤツに女子たちの視線が怖くてあたしは顔を俯かせた。
なにこれいじめ?
頼むからあたしってバレないでほしい。
そのまま嵐は去っていった。
その背中が会場に入るのを見届けてからようやくあたしは息を吐いた。



