圭吾の葬儀が終わっても、四葉は淡々とした日々を送っていた。読みかけの本を読む気力もなく、笑うことも泣くこともしないまま、時間だけが過ぎていく。そんな時だった。

「……東郷くんのお母さんが来てくれた時、驚いたよ」

四葉は呟く。そして鞄の中から手紙を取り出す。卒業式の前日、圭吾の母が届けてくれたものだ。

手紙を開ける。何度も読んだ手紙だ。それを目にするたびに四葉の目の前がぼやけ、頰を涙が伝う。

『好きです』

たった一言。恋愛小説のようなロマンチックな台詞ではない。ありふれた告白だ。それでも、四葉の心を大きく揺さぶった。苦しさと愛おしさが込み上げ、四葉はその場に座り込んでしまう。

「あたしも好き。あの日、そう伝えたかった!」

圭吾に会いたくなるたびに、四葉はここに来る。しかし彼は何も答えない。冷たい石の下で眠っている。

「あなたに会いたい」

四葉の言葉は冷たい風に攫われて消えた。