婚約者の浮気相手は母でした。

 それはいくらなんでも、鈍感過ぎるような気がする。好意を寄せられているなら、少なからず察せるものではないのだろうか。

「……おっと?」
「父様、イルルドです」
「イルルドか、入っていいぞ?」
「ええ、失礼します」

 私とお父様が話してると、部屋の戸を叩く音が聞こえてきた。
 どうやら、タイミング良くイルルドがお父様を訪ねてきたようだ。
 私は、部屋の隅に陣取る。私の用事は大方終わっているので、邪魔にならないような場所にとりあえずいることにしたのだ。

「イルルド、私に何か用か?」
「ええ、ちょっと色々と相談したいことがあって……」
「何だね?」
「その……僕の婚約についてです」
「あら……」

 イルルドは、私の方を少し伺いながらお父様に話を切り出した。
 するとお父様の視線も、私の方に向く。恐らく、先程の会話の内容を思い出して、驚いているのだろう。