婚約者の浮気相手は母でした。

「でもお父様には、支えてくれる人がいた方がいいと思うのよね……一人だと、やっぱりちょっと危なっかしいし」
「それには僕も同意するけれど、こればっかりはどうにもならないことだし……」
「どこかに良い人でもいればいいのだけれどね……ああほら、例えばメイド長とかどうかしらね? 彼女は独身だし、年齢的にもお父様とそれ程変わらないし」
「メイド長? ああ、丁度そこにいるね? うん?」

 私達が話していると、辺りを偶然メイド長が通りかかった。そんな彼女のことを、私は冗談半分で口に出したつもりだ。
 しかし、その言葉を聞いたメイド長は、彼女にしては珍しくその場で盛大に躓いた。
 その様子を見て、私とイルルドは顔を見合わせた。これはもしかしたら、本当にもしかするかもしれないと。