「姉さん、大丈夫かい?」
「ええ、大丈夫よ」

 お父様との話を終えた私は、自室に戻って来ていた。
 弟であるイルルドは、ショックでふらふらとしていた私を心配して付いてくれてくれたのだ。
 ベッドに腰掛ける私に、弟は水を持ってきてくれた。それを飲んだことによって、幾分か心が楽になったような気がする。

「私なんかよりも、お父様のことが心配だわ。ショックの大きさで言えば、私以上でしょうし……」
「もちろんショックは受けているだろうけど、父様は現場を自分の目で見た訳ではないから、衝撃は姉さんの方が上なんじゃないかな? まあ、どちらにしても今はそっとしておく方がいいんじゃないかな?」
「……そうかもしれないわね」

 私の脳裏には、事実を伝えた時のお父様の悲しい表情が焼き付いていた。
 お父様とお母様は、仲が良い夫婦だったはずだ。政略結婚ながら、幸せな家庭を築いている。私は、そんな二人の関係に憧れさえ覚えていた。