婚約者の浮気相手は母でした。

 その直後に聞こえてきたのは、リビルト様の叫び声だった。
 そうなることは、飛び降りる前からわかっていたはずである。それでも飛んだということは、それ程までにエルヴィー侯爵から逃げたかったということなのだろう。
 とりあえず私は使用人に指示を出して、リビルト様のことを任せる。

 リビルト様にも言いたいことは色々とあったが、とりあえず彼はエルヴィー侯爵が裁いてくれたのでいいとしよう。
 それよりも今は、こちらの問題を解決しなければならない。その問題の根源であるローライト侯爵夫人は、複雑な表情で私達のことを見ている。

「……随分と久し振りに会うような気がするな、アメルタ」

 私達とお母様との間にあった沈黙を破ったのは、お父様だった。
 彼は、ゆっくりと一歩前に出る。そして上着を脱ぎ、それをお母様に投げ渡す。