婚約者の浮気相手は母でした。

 そこでお父様は、イルルドの方を見た。それに釣られて、私も彼の方を見る。
 そして私は気付くことになった。イルルドが複雑な表情で固まっているということに。

「イルルド、あなた……」
「姉さん、姉さんはどう思っているのかな? 僕と婚約するということに……」
「えっと、それは……」

 私の問いかけに、イルルドは質問を返してきた。
 その顔は真剣そのものだ。つまり彼も、色々と考えているということなのだろう。
 そんな彼に、私は答えを返せない。すぐに考えがまとまらないのだ。

 それは、当然のことだといえるだろう。
 この決断は、私とイルルドのこれからを変えるものだ。そんなに簡単に、答えが出せることではないのである。

「……答えは出ないかな?」
「え、ええ……私には少し、難しい問題ね?」
「そうか。それなら、僕から言わせて欲しいことがある」