恋愛偏差値が低すぎる!!

立川は呆れた様子で深いため息をつく。さっきまで感情的だった様子とは打って変わって、大人びた雰囲気を醸し出している。立川の反応を見ていると、なんだかわたしだけが無礼なことをしたみたいで、納得がいかないな。

「じゃあ、もう用事は済んだってこと?」

「はい、そうですけど」

「帰ったら?いつまでもここにいたって仕方ないでしょ」

はぁ?私は最初からそのつもりだったし、貴方が話を大きくしたから長引いたんでしょ、と言い返したかった。

しかしその瞬間、離れたところで6時を知らせる放送が聞こえて、言葉が喉元につっかえて止まった。
凄く懐かしい文言だった。タクシーの中で、小さな私立小学校を見たから、距離的に多分そこからだろう。

ーー紬ちゃんにも友達が出来ますように

身体の前で手を合わせ、目を閉じる。小学六年生の時、夕暮れの茜色に染まる教室で、私のために泣いた先生のことが頭をチラついた。あのころから人が泣いているところ見るのは、理解できないから苦手だった。
だがあの時は、なんだか水をいっぱい飲んだ時みたいな苦しさがあって、この人には安心してもらいたいと思ったんだ。あの日を境に私は賢くなることを決意した。

あぁ、勉強しよう。時間が惜しい。

「はい。勉強しなきゃ行けないし、それも渡せたことなんで帰ります」

「ええ、もう帰っちゃうの?」

白星は小型犬のような眼をして、こちらを見てくる。

「はい、やる事ないんでここにいても」

「やる事ないって、加藤さんって本当に興味無いんだね」

「ん、なんの話ですか?」

「うんん、こっちの話」