恋愛偏差値が低すぎる！！

「ちょっと落ち着いてください、色々と勘違いしてますよ」

「そうだよ、葵。ちょっと落ち着けって」


とりあえず宥めてみる。きっとこの人にとってのトラウマを刺激してしまったんだ。これは人と関わってこなかったことの弊害だ。簡単に人に踏み込むべきではなかった。
まさかここでその経験のなさが露見するとは思いもしなかった。
だから人と関わるのは嫌なんだ。人間の怒りの沸点は個体差があるから、分かりづらい。

「実は、芦田先生に頼まれてここまで来たんです。立川葵という子に渡して欲しいって。それに本人に会うまではまだ男だということすら知らなかったですけど」

「ええ？それ本当に言ってる加藤さん」

立川葵ではなく、白星のほうが大きな声を出す。

「まあ、立川葵の認識は自分よりも頭が良い奴だったんで」

「頭がいい奴？…」

「奴…？」

二人は私の言葉を咀嚼するために反芻する。

「そうです。だから自意識過剰というか、なんというか…」

言っていて、この言葉選びは間違っていることは分かっていた。ただ丁寧な言葉遣いをするよりも、事実を話すことだけに集中したかった。別に後ろめたいことなんてないと、正々堂々としていたかった。