恋愛偏差値が低すぎる!!

どういう事だ?

立川葵が言っていることがよく分からない。どうしてテストの話に、親が出てくるのか。関連性はひとつも無いはずだ。

「よく分からないんですけど、親がどんな職業についているのかって関係あるんですか」

「そうだよね、ごめんね葵が訳わかんないこと言って」


白星咲夜が立川葵の肩を軽く叩く。しかし立川葵は俄然真顔のまま、私のことを睨みつける。

「じゃあ、どうしてわざわざ会いに来た?」

「いや、私はこれを届けに…」

「本当に君は親切心だけで来たのか?単にこの成績表を届けるためだけに、ここまで?」

「それは…」

確かに立川葵か言っていることは正しい。わたしは自分よりも頭がいい立川葵のことを一目見たくて、ここまで来た。動機は不純である。
 だが、立川葵の言うニュアンスとはまた違うような気がするのだ。そこまで咎められるようなことか?誰だってライバルの顔ぐらい見たいだろう。

黙り込む私を見て、立川葵は見透かしたように鼻で笑う。

「どうせ皮肉を言いきたんだろ。お前は恵まれた環境で生まれて、色んな大人に贔屓されてていいなって」

「はぁ?何を言っているんですか。私はそんな…」


「ちょっと辞めなって本当に」


そんなこと1ミリも思っていない。そもそも立川葵の親のことすら知らない。

「じゃあ俺にどうにか覚えてもらいたくて、顔を見せに来たってことか?会う口実ができたって、こんなもの持ってきて、悪態つけば、覚えて貰えるって思ったって?」

「いや、私は…」

早口で捲し立ててくるからか、その勢いに飲み込まれ、自分の意見がまとまらない。

「今まで、君と同じように出し抜こうと必死な女の子たちは居たんだけど、皆欲にまみれて、人間の汚いところが露呈して、逃げるように去っていった」

立川葵は時折り口角を上げ、笑っているようにみえるが、多分あれは笑顔ではない。ストレスで口が痙攣しているんだ。
でもどうして、そんなに怒っているんだろう。失礼な態度を取ったかもしれないが、立川葵の逆鱗に触れるほどのことか?
そもそも私は立川葵が何者なのか、よく知らないし、立川葵の頭脳以外は興味すらない。私はずっとテストの話をしているのに、どうしてこの人は次から次へと理解できないことばかり言ってくるのか、全く分からない。