恋愛偏差値が低すぎる!!

「加藤紬?」

手の主は、私の名前を呟くと、パッと手を離した。

やっと開放された。頭に残る手の感触が薄まっていくの感じながら、ゆっくり顔を上げる。
なんて手荒な奴なんだ。まだ微かに頭に重みが残っていて、なんだか気持ちが悪い。

頭を擦りながら、立川葵らしき人間がいる方を見ると、冷たい視線を送る男と重なった。

その男は、目に悪いぐらい明るい髪色をしていて、パッと見た第一印象は色々と楽しんでそうな人。勉学以外にも楽しみを見出し、人生を謳歌してそうな人。
は?本気か?
こんな外見のやつが、自分よりも頭が良くて、天才と称される人なのか?私はこんな見た目のやつに、負け続けているのか?いやいやいや、はぁ?

信じ難い現実に、自分の過去が全否定されている気分に陥った。
ああ、これは夢なんだ。目が眩んで、立ちくらみがする。こんなことならまだAIでいてくれた方が楽だった。

「加藤さんごめんね。この人昔から他人には厳しい人でさ、大丈夫?」

「あ、いや別に大丈夫です」

「お前、本当に加藤紬?」

「はい?」

「本当に加藤紬なの?」

「そうですけど」

フーンと訝しげに唸る立川葵。眉間に皺を寄せ、私の測るように見ている。