恋愛偏差値が低すぎる!!

「幼なじみ?」

「うん、腐れ縁っていうか、擬似家族っていうか。まぁとにかく葵とは近しい関係だってことだね」

そこまで近い間柄なら、別にいいのか。立川葵も、顔を見知った人から渡された方が、多分安心するだろうし。

脇に抱えた茶封筒を両手で持ち直した。軽く頭を下げ「じゃあ、これ立川葵にお願いいたしま…」と言い切る前に、

「誰だその女」

後ろからドスの効いた低い声がした。頭をあげる間もなく、私の頭に誰かが手を置く。その手はぐっと力を入れると、その重さと力強さに、首が一瞬で硬直した。

私は理解ができない状況に、不思議と恐怖心は芽生えずに、思考は完全に停止し、感情は無に近かった。

ほら、やっぱり人間は心底驚いた時、そこに喜怒哀楽は存在しないじゃないか。


「ちょっと葵。加藤さんに乱暴なことしないで」

「え、不審者じゃないの?」

「違うよ、クラスメイトの加藤紬さんだよ」