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サトルの大きな背中を見上げながら、雨上がりの道を歩く。学校が終わった学生たちは、朝からのテンションと変わらずぎゃあぎゃあと声をあげている。
「なぁ」
サトルの声と同時に、立ち止まったサトルの背中に鼻をつぶされた。
「いった。急に止まんないでよ」
「ごめん、大丈夫?」
振り返って私の顔を両手ですくいあげる。逃げ場のない視線がぶつかり合った。勝手に降ろされたマスクの下の鼻は、多分赤く染まってる。
ついでに、ほっぺたも。
「キズにはなってなさそう。赤くなってるけど、ほんとごめん」
私の鼻を人差し指で軽くなぞって、唇をゆるませる。だから、イヤなんだ。こいつと一緒に放課後を過ごすだなんて。
「あ、マスクも勝手に下げちゃってごめん」
「別にいいよ」
「そこのコンビニ入ってくるから待ってて」
わかった、という間も無くサトルが近くのコンビニに入っていく。鼻を冷やすものでも、買ってくるんだろうか。寒いんだから勝手に冷やされるし、気にしなくていいのに。
行き場を失った言葉を飲み込んで、マスクを鼻まで引っ張り上げた。
「おまたせ」
サトルの両手には、アイスが二つにぎられていた。冷やすものでもなんでもないじゃん。勝手に想像してただけだけど。
「はい」
差し出されたのは、チョコレートアイス。こんな寒い日にアイスを外で食べるだなんて、意味がわからない。