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次の日の昼休み。屋上でのこと……
「で、どうしたらいいかって聞きにきたの?」
「うん。教えてくださいっ!夏帆先生っ!!」
私は手を合わせて頼み込む。
彼女は如月夏帆。国内No.2の如月グループの次女で、父同士が交友関係があり、小さい頃から会うことは多かった。私と夏帆も幼い頃からずっと親友だ。
そして、私の素を見せられる数少ない中の一人。
「……それ、昨日先輩にフラれた私に聞く?この無神経が。」
夏帆にコツンと頭を叩かれる。全然痛くないけど。
(あっ!?そういえばそんなこと言ってたような……。自分の事で精一杯で夏帆の事情を考えられてなかった。……申し訳ないな。)
「ごめんなさい……。初めての事で気持ちが焦っちゃって……。やっぱり自分で考えるね。………うーん……。」
璃子は呆れた顔をする夏帆のことなど一切気にせず、考え込み始めた。
「……いや、璃子が考えたらろくな事にならないでしょ。」
もちろん、自分の世界に入り込んでしまった璃子にはそんな言葉は聞こえていない。ぶつぶつと何かを話しながら俯くだけだ。
「………聞こえてないね。うん、知ってた。」
昔から親友である夏帆はこのような事は慣れっこ。いつもこんな璃子を温かい目で見守ってきたのだった。
そうして、夏帆がお弁当を食べ終えた頃……
「……よし、やっぱり告白しよう!!」
「……は?何言って…」
「それが一番だよね!そうと決まれば今日の放課後……いや、今でしょっ!!」
璃子はお弁当と夏帆のことなんか忘れて屋上を飛び出していった。
夏帆は咄嗟のことですぐに反応出来ず、いつも澄ました顔に動揺が浮かぶ。
「ちょっ……璃子!?……行っちゃった。」
夏帆が声を掛けた頃にはもう璃子は屋上にいない。
「……私、知ーらないっ。」
夏帆はそう言ってお弁当を片付け始めた。

