「ふっ。それが素なんですね。」

「えっ!あー……あはは。ごめん。誰にも言わないで。」

うっかりしてていつもの調子で話しちゃってた……。父さんにいつも気をつけろって言われてたのに〜。

槙野くんはクスッと笑って言った。
 

「良いですよ。……二人の秘密ということで。………言いたくもないし。」


「っ!?」

薄く形のいい唇に手を当て、笑顔でそう囁く槙野くんは同い年とは思えないほどの色気を醸し出していた。槙野くんのこと、さっきは焦りであまり見てなかったけど、余裕になった今ならわかる。本当に美形だ。………これはモテるだろうな……。私の頬がじんわりと赤くなっていくのが分かった。

そういえばぼそっと溢した最後の言葉は聞こえなかったな。なんで言ったんだろ?

そんな事を考えたのも一瞬。槙野くんからの視線を感じて焦る。

(顔赤いのがバレるっ!)

私は赤い顔を隠すように手元の書類を見て頑張って話題を逸らす。

「そっ、そういえば!もうすぐ学園祭だね!また仕事が増えるなー。」

「そうですね。……でも無理はしないでくださいね。今日も疲れた顔してますし、一人で抱え込んでいたのでしょう?」

「え……。」

今日も……って…。

「生徒の対応をしてるのを遠くから眺めてたのですが、ちょっと無理して笑っていたように見えて…。今もここにクマできてますし。」

「んっ…。」

槙野くんは私の目の下を触り、顔を覗き込んでくる。
私はくすぐったくて体を捩らせた。

槙野くんはそんな私を見て意地悪な顔でクスッと笑ったが、今度は子供を見守っているような、温かくて優しい表情に変わった。

その顔がとても美しくて、私は目が離せなかった。