「……あのっ!渚斗さん……。腕、痛い…ですっ!」
「それぐらい我慢してください。とにかく、今すぐ帰りましょう。」
「やっ…!嫌ですっ!!離してっ……」
「……あなたは政略結婚の意味を知らないのですか?この結婚は両社にとって必要なこと。あなたもお父君のご意向の妨げになりたくないでしょう?」
「っ………!」
何も言い返せない。私は…西園寺財閥の娘。財閥の意向の妨げになりたくない。そして……、大好きなお父様の邪魔にも………。
もう……私には抗えない。
「……分かったら行きましょう。」
やだ……って。そう、思っているのに……。
そう思っているのに体が思うように動かない。自分の意思を貫けない、自分が情けなくて涙で視界が滲む。
「……っ」
その間にも蒼葉は璃子の腕を引いて歩く。少しずつ、会場の屋敷に近づいていく。
…………やだっ!槙……いや、颯斗くんっ!!
「その手を、離せ。」
もうダメだと涙を流して諦めようとしたその瞬間。背後から愛しい人の声が聞こえた。
驚いて振り向くと息を切らして肩で呼吸する颯斗くんがいた。
「は…やと……くん……。」
ぼやける視界の中に待ち望んでいた、大好きな人がいる。
……夢?私は自分の頬を掴まれていない方の手でつねる。
……痛い…。夢じゃないっ?

