【短編】天然お嬢様は焦らされてる事に気づかない。


***

「息子の渚斗です。…挨拶しろ。」

「蒼葉渚斗です。本日はよろしくお願いいたします。」   

私の縁談のお相手、渚斗さんはとても知的な雰囲気があり、真面目そうだ。でも、少し小難しそうな雰囲気もある。

「そちらの方が、璃子さんですか?」

渚斗さんの父君、蒼葉グループの社長がこちらの紹介を促す。

「ああ。……璃子。」

「はい。お初にお目にかかります。西園寺璃子と申します。」

いつもの猫被りでお上品に礼をする。我ながら完璧だ。

「丁寧にどうも。……それで本題に入ろうと思います。まずは……」

それからも蒼葉社長の先導で順調に話が進んでいった。そして、大方話が終わったあと……

「それじゃあ、若いお二人で散歩でもしたらどうですか?ここの庭は素晴らしいと評判だからねぇ。」

急に私に声をかけてきた。

「えっ……」

きっと私と渚斗さんの仲を深めて縁談を確かなものにしたいのだろう。お見合いで定番の若い二人でというやつだ。

「……分かりました。……行きましょうか、璃子さん。」

渚斗さんは立ち上がって私の席の前に来た後、手を差し伸べる。

「……はい。」

彼からの誘いを無下にすることもできず、そっと差し伸べられた手を取る。