【短編】天然お嬢様は焦らされてる事に気づかない。



…もし、もしも私が今回の縁談を断ったら、恩を仇で返すのと同じ。取引は今まで通りにいかないだろう。
会社に迷惑をかけたくない。それは私のモットー。

でも………

私の頭に愛する人の顔が浮かぶ。

会って初めて見せてくれた笑顔。少し照れて赤くなった顔。無愛想に見える無表情も…。

すべてが愛おしい彼、颯斗くんを……思い出す。

彼は私を救ってくれた。疲れた私に休むことを教えてくれた。素の自分を連れ出してくれた。恋というものを教えてくれた。

本当に好きで…何よりも大切な人。


………でも、私は西園寺の娘だ。そんな私情で会社の名誉に傷つけるわけにはいかない。


「……分かりました。お受けします。」

「………そうか。ではまずは見合いだな。来週末ぐらいになるだろう。準備しておけよ。」

お父様は少し物言いたげな表情だったが、結局何も言わなかった。
……何もかもお見通しなのかな。  

お父様にはよく分かりやすいと言われるが、きっとお父様が鋭いだけだ。

「はい。………」