「………誰とですか?」
そう聞かれて顔が真っ赤になる。
(わかってるくせに…。意地悪なんだから。)
よし、ここは堂々と颯斗くんとだよって言うんだ!
彼を落とすためならどんとこいだ!
そう思い、気合い十分で見上げると、そこには少し顔を赤らめて見下ろす颯斗くんがいた。
その瞳には熱がこもっていて、その中に囚われそうになるほど、目が離せなかった。
ついさっきまでやる気満々だったのに一気に勢いが萎んでしまった。
「……誰なんですか。」
逃がさないとでも言うように二度目を繰り返す颯斗くん。私の鼓動は尋常じゃないほどに速く、生徒たちの声も遠く感じた。
まるで二人きりのように錯覚するほど、周りが見えなくなっていた。
「……言わなきゃ、だめ?」
「言って……璃子。」
耳元で名前を囁く颯斗くんは本当に意地悪だ。私が余計言うのが難しくなることは分かってるはずなのに。
「っ……颯斗くんと、踊り、たい……。」
私はなんとか勇気を振り絞って言う。
手で握り締めた制服はしわくちゃになってしまった。
「………」
まだ続けた。まだ…伝えたいことがある。
「だって……颯斗くんが好き、だから。」
「……じゃあ踊ろう。」
「へっ!?」
「…おいで。」
そう言って私は腕を引かれる。
そうして誘われるままに踊る体制になった。
その瞬間、二曲目が流れ始める。
沢山の生徒が踊っている…そこから隠れた場所で私たちは踊り始めた。
特別感に包まれ、颯斗くんの腕に包まれる。
少し当たる手や肩、体にドキドキしながら、私たちは踊った。
一つだけ心残りがあるとすれば……私は俯いたままだったから、颯斗くんの表情は見えなかったのが残念だった。
しかしそんなのは些細なことで本当に幸せで、今日一日頑張って良かったと思った。
……そんな浮かれた私はもちろん知らない。
この後、あんなことが起こることなんて………

