【短編】天然お嬢様は焦らされてる事に気づかない。



***

そうして始まった後夜祭。そんな私の心の内なんて誰も気づかず笑顔で踊り始める生徒たち。

ああ…悲しいかな。

とほほと心の中で嘆きながら舞台裏で水を飲んでいると…

「璃子、お疲れ様です。」

「っ、う…ゴホッゴホッ!」

「ああ、すみません。驚かせてしまいました。」

颯斗くんはそう言って咳き込む私の背を撫でてくれた。

そんな小さな気遣いでもときめく私はチョロいのだろうか…。いや、好きな人に触れられたらそりゃあ嬉しいよねっ!あー幸せ〜……。


むせたのは颯斗のせいだが、それは忘れている璃子だった。

(咳き込んでよかった〜。)

咳がおさまってくると颯斗くんは手を離してしまって寂しさを感じた。

「今日、初めて会いましたね。」

「ゴホッ…だね〜。お互い忙しかったから…。もう、これまでの人生で1番の忙しさだったよ……。」

「……ですね。さすがに俺も疲れました。」

二人してため息をつく。ちょうどタイミングが同じで顔を見合わせる。

「ぷっ、あはは!タイミング一緒だったね!」
「すごいシンクロですね。」

ああ…颯斗くんと話してると疲れが取れていく。
すごいなぁ、恋の力って…。

そう思いながら笑っていると、フォークダンスの一曲目が終わった。

舞台裏からでも意外とよく見える。
一部の男女は告白し合って笑顔になっていく。
その表情は本当に幸せそうだった。

「……いいなぁー」

気がついたら口に出していた。

「…何がですか?」

「んー……。青春してるなぁって思って。ほら。」

私が指で示すと、颯斗くんは納得したように「ああ…」と呟いた。

「いいなぁ…。私も踊りたかった。」