小さい頃、寧々は頻繁に入退院を繰り返していた。

 奈々たちの父さんも母さんも、寧々にかかりっきりで、奈々はきっと寂しい思いをしていたはずなのに。

 奈々は、寧々の心配ばかりを口にした。


 寧々の入院中ずーっとってわけじゃなかったけど、母親同士が仲良かったってのもあって、奈々はよく俺んちに泊まりにきてた。

 親にはナイショで、布団に入ってからも、二人で夜遅くまでずっとおしゃべりして。

 ああ。でも夜中に菓子食ったときは、さすがにバレて怒られたっけ。


 くりっとした好奇心旺盛な目で、いつだって俺に対抗心むき出しで。

 小さい頃は、俺の方が悔しい思いばっかしてたけど、いつからか俺が連戦連勝しはじめて。

 しばらくしたら、もう俺には一切挑んでこなくなっちまったんだよな。


 あんときは、ガチで凹んだなー。

 俺に興味なくなったんだな……って。


 で、そんときに気付いたんだよな。

 あれっ? 俺、奈々のこと、めっちゃ好きじゃん、って。


 でもアイツは、俺と寧々をずっとくっ付けたがってた。

 そんな空気を、ずっと感じていた。


 まあ、俺だって、寧々の好意に気付いてなかったわけじゃねーけどさ。

 それでも、自分の気持ちはどうにもできねえんだよ。