それにしても、さっきの奈々のひと言は効いたなー。

 正直、残りのHP全部もってかれるくらいのダメージ食らったわ。


『あたしはそうは思わない。いくら離れてたって、きっと好きって気持ちはなくなったりしない』

 そう言いながら、鬼の形相で俺のことを睨む奈々の顔を思い出す。


 物理的な距離ができれば、気持ちも離れてしまうんじゃないかって思うと怖かった。

 そんな思いをするくらいなら、いっそこの気持ちはなかったことにした方がいいって、自分にずっと言い聞かせてた。


 ——ま、そもそもアイツが俺のことを男として意識してる可能性なんて、ゼロに等しいんだけどさ。


「てか『寧々、寧々』ってなんだよ。俺が好きなのは、ずーっと奈々だっつーの」

 絞り出すようにしてそう言うと、両手で自分の髪をぐしゃっとしたまま頭を抱える。