「ちがっ……そうじゃなくて……」

「別にいいよ。わたし、もうずっと前にコータにフラれたし。でも……コータが東京に行っちゃう前に、わたしも一緒にコータのお別れ会くらいしたかったな」

 くしゃっと顔をゆがませると、寧々は家の中へと駆け込んだ。


「……どういうこと? 寧々のこと、本当に振ったの、コータ?」


 コータの方を見ると、微妙な表情を浮かべていて、それが本当だと物語っていた。


「寧々のことを、そんなふうに思ったこと、今まで一度もなかったけど、さ。たとえそうだったとしても……もうすぐ東京行っちまうってのに、付き合えるワケねえだろ」

 コータが、はじめて見るような苦しげな表情を浮かべている。

「東京に行くから……遠距離になったら、気持ちをつないでいられる自信がないから……だから、寧々のこと振ったってこと?」

「だから、そうじゃなくてっ……!」