本当はもっと適当な感じで、ササッと渡そうと思ってたんだけどな。
実際、今日一日のうちに、何度も渡すチャンスはあった。
スイーツをお腹いっぱい食べたあとに、あたしが紅茶、コータがコーヒーを飲みながらまったりしてたときとか。
スポッ〇ャを出たときに、なぜかコータだけ汗だくになっているのに気付いたときとか。
でも、どうしても渡せなかった。
だって、これを渡してしまったら、コータがいなくなるっていうことを認めなくちゃいけなくなる気がして。
ちゃんと笑顔で送り出すって決めたはずなのにね。
なにやってるんだろ、あたし。
こんなもの、渡したって、渡さなくたって、コータがいなくなるっていうことには変わりないのに。
もうすぐ家に着いてしまう。
だから、その前に……。
「二人で出掛けてたんだ」
聞き慣れた声に、ピタッと足を止め前方を見ると、沈みかけた夕陽を背に、寧々が立っていた。
実際、今日一日のうちに、何度も渡すチャンスはあった。
スイーツをお腹いっぱい食べたあとに、あたしが紅茶、コータがコーヒーを飲みながらまったりしてたときとか。
スポッ〇ャを出たときに、なぜかコータだけ汗だくになっているのに気付いたときとか。
でも、どうしても渡せなかった。
だって、これを渡してしまったら、コータがいなくなるっていうことを認めなくちゃいけなくなる気がして。
ちゃんと笑顔で送り出すって決めたはずなのにね。
なにやってるんだろ、あたし。
こんなもの、渡したって、渡さなくたって、コータがいなくなるっていうことには変わりないのに。
もうすぐ家に着いてしまう。
だから、その前に……。
「二人で出掛けてたんだ」
聞き慣れた声に、ピタッと足を止め前方を見ると、沈みかけた夕陽を背に、寧々が立っていた。