「あー、マジで体なまってんなー」
スポッ〇ャで三時間たっぷり遊んだあとの帰り道。
腕をぐりぐり回しながらコータが言う。
「ふふっ。そんなんで、東京行ってから大丈夫?」
「さすがに素振りとランニングくらいは毎日してるけど、このままじゃヤベーなって思ったわ」
ははっと短く笑うと、あたしとコータの間に長い沈黙が落ちる。
今、だよね。
今、しかないよね。
カバンの持ち手をぎゅっと握りしめる。
実は、コータへの誕生日プレゼントを、今日一日持ち歩いていたの。
3月生まれのあたしたちより、1年近く早く生まれたコータ。
4月2日の誕生日より前に、きっと東京に旅立ってしまうから。
その前に、どうしても渡したかったんだ。
散々迷った挙句、コータが好きなスポーツブランドのタオルなんていう無難なモノになっちゃったけど。
それでも、『東京行っても、野球がんばってね。応援してるよ』っていう気持ちだけは、いっぱいに込めたつもり。