パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-



理由は教えてくれそうにない。


「ほんっとすみませんでしたー!!ごゆっくりしてって下さい!!」


頭を下げてきた彼らが放つ大きな声が、早足に立ち去っていった距離につれてどんどん遠くなっていく。




「…?あの人たち、大丈夫?」


「あぁ。葉月チャンは気にしなくていーの。ところでどしたん?こんなむさ苦しいところに一人で来て」



生徒達にあっけに取られ、本題を忘れていた。

そうそう、私は柳のスマホを渡しに来たんだった。



「これ、柳に渡しといてくれる?」と、彼のスマホを差し出す。


由井くんは一向にそれを受け取らない。


うーん、と顎に手を当てて悩んでいる様子だ。




「今暇だし、自分で渡しなよ。柳のところまで連れてってあげるからさ」



そう言われ、私は由井くんと共に
その荒れ果てたと言う言葉がぴったりな阿久津沢定時コースの校舎の中へと足を進めた。


玄関口をくぐってもなお、校舎の中は外と変わらずの状態だった。



壁にあるらくがき。


廊下の隅に落ちているがらくた。


柳がいつも来ているものと同じ制服を纏った彼らの人の間をぬって、由井くんはどんどん進んでいく。


生徒たちの視線がいたい。



私はなるべく前だけを見るようにして小走りで彼の後ろを追った。




「あの、」と、私の前を歩く背の高い
大きな背中に話しかける。



「さっきの人たちなんであんな焦ってたの?
柳に何かされたの?」




「なんでってそりゃあ、佐百合はうちのトップだからね」



トップ?



思いもよらない返事が返ってきて、私は足を止めた。